2018年のノーベル賞受賞

2018年、ノーベル医学生理学賞を本庶佑(京都大学高等研究院)特別教授が受賞されました。心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます。

この受賞の元となった研究は、癌の「免疫療法」です。よく言われているのが、「癌細胞というのはどんな人にもだいたい3000個くらいはあって、それは自分の免疫力で排除されている」ということですが、癌細胞には、その免疫力を低下させる機能まで備わっているということが分かってきています。ノーベル賞を受賞した本庶特別教授の研究内容は、その免疫力を再活性化させて癌細胞を死滅させるという仕組みなのですが、それがいまや癌の治療薬として使えるまでになっていることがとても素晴らしいのです。

私自身も、「自己免疫力の強化こそが最強の健康管理」と考えていますので、このノーベル賞受賞には、改めて勇気を頂きました。

医学・薬学の優れた研究成果があっても、実際に、医療現場で使えるようになるまでには、多くの道のりがあり、なかなか実用化は難しいのです。基礎研究はとても重要であるのですが、それを発展させて実用化させるのは次の世代であったりします。しかし、その研究成果をじっくりと正確に育て上げてくれる後継者と出会えるかどうか、それも時の運なのかもしれません。私が京大薬学部で師事した故藤多教授も研究成果を薬にまでした貢献者であり、尊敬してやみません。

信念に敬意を

癌の免疫療法というのは、本庶特別教授が着手する以前から研究されていましたが、その当時は「免疫療法は効果が低い」というのが定説でした。癌細胞を攻撃してこそ抗がん作用であり、自己免疫力を高めてもさほど効果が高くないという時代だったのです。のちに、癌細胞自体が免疫力を低下させる機能があるということも分かってきたのですが、その研究当時はとても実用化には程遠いと思われていたそうです。ですので、実用化に向けた共同研究先を探すのに大変苦労されたそうです。

しかし、本庶特別教授は絶対にものになると信じて、共同研究先を情熱的に探したそうです。研究者というのは、ときに対外的な行動がうまくいかないときもあるのですが、そこさえも情熱的に動く本庶特別教授に本物を感じずにはいられません。

後に、本庶特別教授は語っているのですが「始めから臨床応用を考えていたわけではなかったが、20年かかってようやくここまで来た」というように、本当は臨床(すなわち、薬として研究成果が使えるようになること)を目指していたわけではないが、それも含めて、基礎的な研究をさらに進めたいという信念からの行動だったのかもしれません。しかし、実用化も基礎研究も成し遂げる信念には本当に敬意を表します。

普段から健康な生活をしましょう

とはいえ、この研究成果であるニボルマブという薬剤はとても高価です。できるなら、治療のお世話にならないのが一番です。

ニボルマブの治療対象となるメラノーマという皮膚の癌は原因不明とされています。ですが、この免疫療法で効果が高いとすれば、普段から免疫力を高めておくことでメラノーマになりにくくなる可能性はあります。ぜひ、普段の生活を健康的にすることで、病気になりにくい身体を維持しましょう。